育児休業給付金は、非課税となっていて、税金が引かれるということはありません。
しかし、「非課税ってどういうこと?」と、ちょっと疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方のために、育児休業給付金の非課税について、所得税と住民税との関係を交えながら、わかりやすく解説していきたいと思います。
育児休業給付金が非課税になるってどういうこと?
「育児休業給付金が非課税になる」と、一口に言っても「どこの部分がどう非課税なの?」と、困惑されている方って、実は意外と多いと思うんです。
もしかしたら「私って、無知!!」と、悲観してしまう方もいるかもしれませんが、総務の仕事に携わったり、給与明細に関心があったりしない限りは、よく理解していない人がほとんどではないかと思います。
なぜならば、給与の税金関係、社会保険関係って、とても複雑でわかりにくいんです。
これから、「育児休業給付金が非課税」とはどういうことかを解説していきますので、少しでも理解していただければと思います。
育児休業給付金ってそもそもどこから支給されるの?
雇用保険の被保険者が、1歳未満の子供を養育するために、育児休業を取得し、一定の条件を満たした場合に、受け取ることができる給付金を、育休手当(育児休業給付金)といいます。
(パパママ育休プラス制度の場合1歳2か月未満、保育所に預けられない等の理由で延長した場合は1歳6か月、または2歳未満の子供)
一般的な給料明細には、「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「所得税」「市県民税」の項目があり、給与からそれぞれが差し引かれていますよね。
育休手当(育児休業給付金)は、その中の雇用保険が財源になっていて、ハローワークから支給されているんです。
育児休業給付金が非課税とは?
非課税とは、読んで字のごとく、税金を掛けないという意味です。
育児休業給付金の課税についての雇用保険法を要約すると、「租税その他の公課は、育児休業給付金として受けた金銭を課することができない」とあります。
このことから、育児休業給付金には税金を掛けることができないのです。
ですので、育児休業給付金としてもらったお金は、税金が差し引かれないで、まるまるもらえるということになります。
育児休業給付金は非課税なのに、なぜ住民税は支払うの?
住民税も税金なので、育休手当(育児休業給付金)に住民税はかかりません。
しかし、育児休業期間であっても、住民税を支払わなければならないのです。
なぜ非課税にもかかわらず、税金を納めなければならないのでしょうか?
わかりやすくするため、所得税、住民税の順に、解説していきますね。
所得税について
まず、所得税の仕組みから説明していきます。
所得税とは、個人が1年間に得た金額に応じて支払う国税のことです。
所得税は、その月の給与(賞与)の金額と扶養家族の人数から、税金を概算して、毎月の給料から天引きします。
1月~12月までの、給与と賞与から天引きされた所得税1年間の合計を算出して、税務署にまとめて支払うのですが、その収入の一部について税金をかけない控除額というものがあります。
控除額とは、給与所得控除、社会保険料、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、個人で掛けている生命保険料や地震保険料、住宅借入金の金額から算出した額などをいいます。
年末近くなると、会社から2枚の用紙が配られて、扶養家族、生命保険などを計算して記入し、会社に提出しますよね。
その用紙に記入されたことをもとに、扶養家族の状況や、控除額を含めた1年間の所得税を一人一人個別に計算して決定します。
しかし、毎月天引きされていた1年間の合計額と、年末調整の額とでは、差額が生じてしまいます。
その過不足額が(会社によって異なりますが)給与などと一緒に支払われます。
それを年末調整といいます。
ほとんどの方は、戻り分が多いのではないかと思います。
ちなみに、年末前後に配られる「○○年分 給与所得の源泉徴収票」の、源泉徴収税額がその年の所得税額になります。
住民税について
次に、住民税についてですが、所得税とはまた別のシステムなんです。
住民税(市県民税)とは、その土地に住んでいる人や会社などにかけられる地方税のことをいいます。
会社では、上記の年末調整で算定された源泉徴収票の金額を、各市町村の役所に提示します。
各市町村では、各個人の源泉徴収票の金額をもとに、各市町村独自の算定方法で、住民税(市県民税)を算定します。
算定された住民税は、次の年の6月から翌年5月にかけて、12分割して給与から天引きされます。
5月から6月くらいに、会社から配られる市町村ごとの細長い紙が、住民税の決定通知書です。
住民税は、前年度1年間の所得に対して課税され、その次の年の6月から翌年5月にかけて納税することになります。
ですので、育児休業中であっても、今年度は、前年度分の住民税を納める必要があります。
しかし、育児休業中は給与がないので、天引きすることができません。
そのため、休業前の給与から残りの住民税を一括で天引きされるか、または、市町村から直接納付書が送付され、自分で納付するようになります。
育児休業給付金には、税金がかからないため、育児休業給付金を支給された年の翌年に支払う住民税は、大幅に減税されます。
社会保険は育休手当が非課税ということに何か関係あるの?
所得税と社会保険をごっちゃにしている方が多く見られますので、所得税と社会保険の関係について簡単に説明します。
社会保険とは、健康保険、厚生年金保険、雇用保険などのことを、ひっくるめていいます。
税金と社会保険は、おおもとは国で治められていますが、下記のように管轄がそれぞれ違います。
- 健康保険・厚生年金保険⇒社会保険事務所
- 雇用保険⇒職業安定所(ハローワーク)
- 所得税⇒税務署
- 住民税⇒市町村の役所や役場
すべて給与から天引きされているとはいえ、このように管轄が異なるので、算定基準や計算方法、支払方法、内容もそれぞれ違ってきます。
そのため、育休手当が非課税でも、社会保険に影響が及ぶことはありません。
税金と社会保険は全く別物です。
退職した際に、それぞれの手続きが必要になるのは、このような事情があるからです。
まとめ
税金と社会保険のことを含め、育児休業給付金と非課税の関係について、最後に要点だけをまとめてみました。
- 育児休業給付金は非課税(税金を掛けることができない)ですので、所得税が引かれることはありません。
- 住民税は育児休業中であっても、前年度分を納める必要があるので、今年度は支払いが発生します。(そのかわり次年度は、今年度分の納税額が減るため、大幅に減税になります。)
- 給与から天引きされる項目については、それぞれ別の行政機関の管轄にあり、運営の内容が全く異なります。
- 育児休業給付金は非課税ですが、社会保険には関連がありません。
ここまで、簡単に解説してきましたが、複雑でなかなか理解しづらいかもしれませんね。
しかし、自分がもらっているお給料や育児休業給付金の仕組みを知ることって、とても大事なことだと思います。
これをきっかけに、税金や社会保険について、少しでも知識を得て、これからの育児ライフに役立てて下さいね。