育児休業後、職場復帰するつもりだったとしても、やむを得ず退職しなければならない場合があります。
そんな時、支給されている育児手当はどうなるのでしょうか?
今回の記事では、退職する場合の育児手当(育児休業給付金)について解説していきます。
職場復帰せず退職したら、育児手当はもらえないの?
育児休業を取ったものの、赤ちゃんを預かってくれる保育施設が見つからない、ママの体調が思わしくないなどの理由で、職場復帰を断念し、そのまま退職してしまうケースもあるでしょう。
このような場合、支給されている育児手当(育児休業給付金)は、どうなるのでしょうか?
育児休業給付金とは、育児休業中にもらえない給与の代わりに、雇用保険が財源になって支給される給付金のことです。
あくまでも、子育てをしながら働く被保険者をサポートするための制度なので、育児休業後に職場復帰するという前提でなければなりません。
ですので、休業後に退職する予定がある場合は、支給の対象にはなりません。
しかし、やむを得ない理由で、育児休業給付金の受給中に退職しなければならない場合は、給付金は途中でストップします。
ハローワークのリーフレットには、「支給単位期間の途中で離職した場合、その支給単位期間は支給を受けることができません」となっています。
(支給単位期間とは、育児休業給付金を支給する都合上、育児休業を1か月ごとに区切った期間をいいます。)
つまり、退職する日が属する支給単位期間の、一つ前の支給単位期間まで支給されるということです。
分かりづらいと思うので、具体例を挙げてみます。
例)出産日が【12月9日】の場合
産後休業(8週間) 【12/ 10~翌年の2/3】
育児休業(支給単位期間) 【2/4~3/3】【3/4~4/3】【4/4~5/3】【5/4~6/3】【6/4~7/3】 →→→ 【12/4~12/7(最終支給単位期間)】
育児休業終了日 【~12/8】
(A)6月2日付で退職した場合、翌日の6月3日に離職するということになります。
ということは、【5月4日~6月3日】の支給単位期間の途中に離職となるわけですから、【4月4日~5月3日】の支給単位期間までしか支給されません。
(B)6月3日付で退職した場合は、6月4日に離職するということなので、【5月4日~6月3日】の支給単位期間まで支給されます。
(A)、(B)のように、退職日が1日違うだけで、育児休業給付金の支給額が変わってきてしまいます。
退職を申し出る時には、日付に注意していただければと思います。
また、会社によっては、退職する際は1か月前に申し出る等の規定があることが多いので、これについても確認しておきましょう。
育休手当をもらって退職したら、返納しなければならない?
育児休業給付金を支給された後、職場復帰せず、退職したとしても、受け取った育児休業給付金を返納する必要はありません。
また、免除になった社会保険料に関しても、遡って支払う必要もありません。
育児手当をもらっていて、会社が倒産した場合は?
育児休業中に会社がなくなってしまったら、雇用関係もなくなってしまったということなので、育児休業は取れない形になってしまいます。
ですので、もちろん育児休業給付金も終了してしまいます。
ですが、会社が倒産してしまったのですから、会社都合の退職となります。
その場合は、失業保険がもらえますし、3か月の給付制限期間が免除される等、自己都合退職の場合よりも優遇されます。
ただし、失業保険はあくまでも求職活動をしている人を対象としている手当ですので、すぐに求職活動をできない場合は、受給期間延長措置の手続きをしておくとよいでしょう。
受給期間延長措置の手続きに関する記事はこちら
⇒ 育休後に退職した場合の失業保険はどうなる?押さえておきたい受給のポイント
育児手当をもらって退職する時には周りに気遣いを
出産前は、職場復帰の予定で育児休業を取ったママも、実際子供が生まれて、赤ちゃんとの生活を送っているうちに、事情が変わってきてしまうこともあるかと思います。
「赤ちゃんが病気がちで仕事との両立は難しい。」
「自分の体調が思わしくない。」
「育児は想像していた以上に大変!」
「このまま子供の側にいて育児をしたい。」
等の理由で、退職を考えるママもいらっしゃるかもしれません。
しかし、会社側も、育児休業中の代替で派遣社員を雇っている場合の継続の有無や、社員復帰の準備態勢など、職場復帰の社員を迎えるための業務があります。
なるべく会社に迷惑を掛けないという心遣いが大事なのではないかと思います。
また、前述したとおり、育児休業給付金は、基本的に職場復帰をするということが前提であり、働く人のための制度です。
そうは言っても、会社側では、育児休業後に退職の意を告げられたとしても、それを拒否することはできません。
「子供も可愛い!家計も大変!」その気持ちもとてもよくわかります。
しかし、退職する予定があるにもかかわらず、給付金を受け取って会社を辞めて、後の女性社員が育児休業を取得したい時、快く受理してもらえなくなるかもしれません。
やはり、どうしても退職したい場合は、早めに退職を申し出て、会社に迷惑が掛からないようにしたいものです。
働く環境が良くない中で仕事をしてきた先輩ママたちが、必死の思いで勝ち取った制度です。
休んでいる間に自分の仕事をフォローしてくれている同僚や上司に感謝し、社会人としての責任を忘れないでほしいと思います。