育休後、職場復帰するつもりでいても、何らかの事情で退職となってしまうこともあるでしょう。
その場合、気になるのが失業保険がもらえるかどうかですよね。
育休を取っていて退職した場合の失業保険についてお伝えしていきます。
育休を取って退職した場合に失業保険はもらえるの?
「育児休業を取っていて退職、育児休業給付金をもらっていたけど、失業保険ってもらえるの?」と疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言いますと、育休後に退職したとしても失業保険をもらうことはできるんです。
ただし、失業保険をもらうには条件があります。
参考までに…失業保険のことを正式には、雇用保険の「基本手当」といいます。
基本手当(失業保険)の受給要件について
まず、基本手当(失業保険)の受給資格についてみていきましょう。
下記の1、2の要件のいずれにも該当する場合は、基本手当(失業保険)が支給されます。
1、働ける状態で就職しようとする意志があること。
2、離職日以前2年間に、被保険者期間(※補足)が通算して12ヶ月以上(特定受給資格者、特定理由離職者については、離職日以前1年間に被保険者期間が6か月以上)あること。
(※補足:被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払の基礎となった日数が、11日以上ある月を1か月と計算します。)
ただし、この離職日以前2年間に、病気や怪我、出産、育児等の理由で、引き続き30日以上賃金の支払いを受けることができなかった場合は、その期間を最長4年間まで遡ることができます。
つまり、産休・育休で休業を取っていた場合、離職日以前その休業の期間を加えて(最長4年間)被保険者期間が通算して12ヶ月未満の場合、または、育児に専念するためすぐに就職できない場合は、基本手当(失業保険)を受けることができません。
基本手当(失業保険)を受けるには求職活動が必要
求職の申し込みをした後、ハローワークでは、受給要件を満たしていることを確認した上で、受給資格の決定を行います。
受給資格の決定後、説明会や失業の認定がありますが、必ず出席しなければなりません。
また、2~3回以上の求職活動の実績が必要となります。
その時には、基本的に子供連れで行くことは認められません。
基本手当(失業保険)は、あくまで就職する意思があり、働ける状態でなければならないということをお忘れなく。
特定理由離職者に該当する場合とは
上記の受給要件のところで出てきた、聞き慣れない「特定受給資格者」と「特定理由離職者」について、少し説明したいと思います。
特定受給資格者とは倒産や解雇等で離職となった場合の方をいいます。
特定理由離職者とは期間の定めのある労働契約が更新されない等や、やめるつもりではないのに離職せざるを得なかった正当な理由のある離職となった方のことをいいます。
離職せざるを得なかった正当な理由に該当する具体的なケースについては、下記の「ハローワークインターネットサービス」のサイトをご覧ください。
このサイトによりますと、「妊娠、出産、育児等を理由に退職して、雇用保険の受給期間延長措置の決定を受けた方は、上記の特定理由離職者に該当します。」とあります。
といっても、何のことか分かりづらいですよね。
受給期間延長措置とは、病気、妊娠、出産、育児、介護などのために、退職後引き続き30日以上就職できない場合、ハローワークに申し出ることによって、受給期間の満了日を延長することができるという制度です。
育児休業後に退職した場合、育児が退職の主な理由として考えられます。
育児に専念するために退職したとすれば、子供の育児が一段落してからまた働き始めたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方にぜひ利用していただきたい制度でもあるんです。
では、受給期間延長措置と特定理由離職者の関係についてお話ししたいと思います。
基本手当(失業保険)は、受給できる期間が決まっていて、離職の翌日から1年間の間にしかもらえません。
しかし、この延長措置によって、もともとの受給資格期間である離職日後1年間に、その就職できない日数を加算することができ、それが最大3年間延長することができます。
つまり、育児で30日以上働けない場合、離職の翌日から失業保険の最終受給日になるまでの期間が、合計で最長4年間になるということです。
妊娠、出産、育児等を理由に退職して、ハローワークでこの受給期間延長措置の手続きをして決定した場合は、特定理由離職者になれるんです。
例えば、子供が生まれて退職し、育児に専念するために受給期間延長措置を受けて、子供が保育園に預けられる年齢になって仕事を探し始める時に、基本手当(失業保険)をもらい始めるケースなんかがそうですね。
また、基本手当(失業保険)の受給要件として、一般の離職者が12ヶ月以上の被保険者期間(雇用保険を掛けた期間)であるのに対して、特定受給資格者、特定理由離職者の場合は6か月以上の被保険者期間があればOKになります。
働いていた期間が1年未満で、基本手当(失業保険)がもらえないと思っていたとしても、退職の理由が育児であって受給期間延長措置を受ければ特定理由離職者となるので、6か月以上の被保険者期間があれば基本手当(失業保険)がもらえる可能性が出てきます。
受給期間延長措置の手続きについては、次章の「失業保険の手続き方法」でお伝えしますね。
特定理由離職者は上記のケースの他に、保育所等の利用や親族への保育の依頼、事業所の移転、配偶者の転勤などの退職理由があります。
尚、特定理由離職者に該当するために受給期間延長措置が必要なのは、妊娠・出産・育児のため退職する場合のみです。
(上記サイト「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」の『特定理由離職者の範囲』を参考にして下さい。)
育休を取って退職した場合の失業保険の手続き方法
育児休業後に退職した場合でも、子育てをしやすいように、自宅の近くの職場や両立しやすいパートでの就職を希望します…なんて場合は、基本手当(失業保険)をもらえる条件を満たすことになります。
そんな方は、ぜひ、基本手当(失業保険)の手続きをして下さいね。
基本手当(失業保険)の手続き方法
ハローワークから発行された「離職票ー1」「離職票ー2」が会社から渡されます。
下記の書類を持参して、住居地を管轄するハローワーク(下記のハローワークのサイトを参照)に行って手続きをします。
- 離職票ー1,2
- マイナンバーカード又は、通知カード
- 運転免許証又は、保険証等
- 写真(3×2.5)2枚
- 印鑑
- 通帳又は、キャッシュカード
「求職の申し込み」をした後、「離職票ー1,2」を提出します。
その際に、退職理由についても判定をします。
もし、会社からの退職勧奨であったのに、自己都合退職と記載されていた場合など、退職理由に意義がある時は、相談してみて下さい。
手続きを行った日から起算して、7日間は待期期間となり、受給条件を満たしているかを確認して受給資格の決定を行います。
もし、この待期期間の間に、アルバイト(無収入も含む)等をすると、待期期間は延長されてしまいますので注意してください。
待期期間とは、離職票と求職の申し込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間のことをいい、その期間が満了するまでは、雇用保険の基本手当(失業保険)は支給されません。
また、正当な理由なく自己都合により退職した場合は、待期期間終了後、さらに3か月の給付制限があります。
受給資格決定後、説明会に出席、その後、失業の認定を行うために4週間に1度、指定された日にハローワークに行かなければなりません。
失業の認定を行った後、約5営業日で基本手当が振り込まれます。
ただし、前述した通り、自己都合退職者の場合は、7日間の待期期間満了後、さらに給付制限期間の3か月間を経過した翌日からが、支給の対象期間となります。
ですので、基本手当(失業保険)が振り込まれるのは、ハローワークで手続きしてから、会社都合離職者については約1か月後位、自己都合離職者については約4か月後位になってしまいます。
なお、前章でもお伝えしましたが、基本手当(失業保険)を受けられる期間は、離職の翌日から1年間です。
これを過ぎると、所定給付日数(基本手当の支給を受けることのできる日数)の範囲内であっても基本手当(失業保険)が受けられなくなりますので、注意してください。
転職先で次の出産を予定している場合
転職先で次の出産の予定を考えている方は、基本手当(失業保険)の手続きする際に、注意しなければならないことがあります。
基本手当(失業保険)の受給資格の決定を受けてから再就職した場合、前職の雇用保険加入期間と通算することができなくなり、出産するタイミングによっては、育児休業給付金の支給の対象から外れてしまいます。
というのは、前職の退職での基本手当(失業保険)の受給をすると同時に、前職の雇用保険加入期間はリセットされてしまうんです。
そうすると、再就職した日から、新たに雇用保険期間を数え直すことになります。
もちろん、再就職してからでも要件(育休前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上ある)を満たしていれば、育児休業給付金は支給されます。
転職先で次の出産を考えている方は、基本手当(失業保険)の手続きはよく考えてからなさって下さいね。
受給期間延長措置の手続き方法
前章でお話ししました延長措置の手続きについては、退職後30日が経過したらすぐに(1か月以内)申請書を提出して、ハローワークから決定を受けます。
申請書(ハローワークにあります)、離職票又は受給資格者証、母子手帳、印鑑が必要です。
仕事を探す時期が来たら、求職の申し込みと基本手当(失業保険)の手続きをします。
離職の翌日から4年後より前に基本手当(失業保険)を受給し終わるように、逆算して手続きをするのが理想です。
受給期間延長措置の決定を受けたことで、特定理由離職者に該当し、「正当な退職理由」として判断されます。
それによって、3か月の給付制限がなくなりますので、7日間の待期期間後に、基本手当(失業保険)が支給されることになります。
ちなみに、上記で挙げた退職理由で、保育所等の利用や親族への保育の依頼、事業所の移転、配偶者の転勤なども「正当な退職理由」と同様に判断されます。
手続き自体は、さほど難しいことはないと思いますので、当てはまる方はチャレンジしてみて下さいね。
基本手当の詳しい手続き方法が載っているハローワークのサイトはこちらですので参考になさって下さい。
育休を取って退職した場合の失業保険の支給期間と支給額
基本手当(失業保険)の手続き方法がわかったところで、気になるのは「もらえる期間」と「もらえる金額」ですよね。
ここでは、基本手当(失業保険)の給付日数と給付額についてお伝えしていきたいと思います。
基本手当(失業保険)の給付日数
基本手当(失業保険)の支給を受けることができる日数を「所定給付日数」といいます。
所定給付日数は、離職の日の年齢、雇用保険の被保険者であった期間、離職の理由などによって決定され、90日~360日の間でそれぞれ決められます。
また、特定受給資格者、特定理由離職者については、一般の離職者に比べて手厚い給付日数となります。
1、一般の離職者の所定給付日数(2と就職困難者を省く)
2、特定受給資格者及び、一部の特定理由離職者(補足1)の所定給付日数(就職困難者を省く)
(補足1:特定理由離職者のうち、下記のサイト「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」の『特定理由離職者の範囲』の1に該当する方については、離職の日が平成21年3月31日~平成34年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同じになります。わかりづらいですが、育児のための退職で受給期間延長措置の決定を受けた方はこちらには当てはまりません。『特定理由離職者の範囲』の1とは、契約労働者で該当する方です。)
(補足2:受給資格に係る離職日が平成29年3月31日以前の場合の日数)
基本手当(失業保険)の給付額
雇用保険で受給できる1日当たりの金額を「基本手当日額」といいます。
この基本手当日額は、離職日の直前の6か月に支払われた賃金(残業代や手当を含む、賞与は除く)の合計を180で割って算出した金額(賃金日額)の約50%~80%となっており、賃金の低い方ほど高い率になっています。(60歳~64歳については45%~80%)
基本手当日額は年齢の区分ごとに上限が定められていて、現在は下記の通りです。(平成29年8月1日現在)
- 30歳未満…6,710円
- 30歳以上45歳未満…7,455円
- 45歳以上60歳未満…8,205円
- 60歳以上65歳未満…7,042円
基本手当(失業保険)の金額を計算できるサイトを見付けましたので、参考になさって下さい。
育休を取っていて育児休業給付金を受給した後でも、要件を満たせば失業保険をもらうことができます。
また、お得な制度があることも知っていただけたかと思います。
ハローワークのサイトには、さまざまな情報が詳しく載っていますが、制度自体が少しややこしいかもしれません。
疑問に思ったことは、ハローワークの担当の方に聞いてみるのがよいと思います。
その下調べとして、この「育児LIFE」を参考にしていただけたら嬉しいです。