育児休業中に、育休手当(育児休業給付金)を支給されている場合、扶養はどうなるの?
こんなふうに漠然と思っている方って、実は多くいらっしゃるんです。
そんな疑問にお答えするために、今回の記事では、育児休業給付金をもらっている場合の扶養についてまとめました。
育休手当と3つの「扶養」
「扶養」と一口で言っても、実は、育休手当(育児休業給付金)の支給に関する「扶養」については、次の3つの「扶養」のことが考えらるんです。
- 社会保険の扶養:健康保険、厚生年金保険の扶養
- 税金の扶養:国や自治体に納める税金を、所得から算定する際の扶養
- 扶養手当:扶養家族がいることによって、会社から支給される給与の手当
この3つの「扶養」は、それぞれ独立したものであって、そもそも管轄が違いますし、性質や算定基準なども異なってきます。
ちょっとややこしいのですが、まずは、3つとも別物だと思ってもらった方がいいかもしれませんね。
では、3つの「扶養」のことについて、それぞれ解説していきます。
育休手当をもらっている場合の社会保険の扶養は?
はじめに、社会保険上の扶養について、お話ししていきます。
ここでの社会保険とは、健康保険と厚生年金保険のことを指しています。
*健康保険とは、会社勤めの場合、協会けんぽなどから、健康保険証が発行され、医療費の一部を負担する制度です。
(介護保険は、40歳以上になると、健康保険と合計されて給与から引かれます。)
*厚生年金保険は、年金支給対象の年齢になった時に受けられる年金です。
育児休業でお休みしている間は、この健康保険料と厚生年金保険料は、なんと…免除になるんです。
さらに、育児休業中であっても、今まで通り医療給付が受けられますし、年金も加入期間として扱われます。
つまり、育児休業期間中は、健康保険料を支払わずに、病院の治療費は、今まで通り本人の保険証を提示して3割負担で済みますし、厚生年金保険料を支払わない間も、保険料を納めた期間として、将来の年金額が計算されます。
健康保険と厚生年金保険は、育児休業中で、育児休業給付金をもらっていても、本人の保険の加入が継続しているため、扶養のことを考える必要はないんです。
ただし、この免除を受けるための手続きが必要ですので、しっかり会社の方に確認して下さいね。
手続きや要件などは、こちらを参考になさって下さい。
また、育児休業給付金の受給中に、何らかの事情で退職した場合は、年間の収入が130万円(一部106万円)を超えると、配偶者の扶養になることができません。
その収入には、出産手当金や育児休業給付金も含まれます。
ですので、会社の給与と給付金を合計した年間の見込み収入額が130万円(一部106万円)を超えた場合には、配偶者の扶養になることができません。
そのため、国民健康保険・国民年金に加入するか、個人で社会保険を継続する必要があります。
詳しい内容は、下記のサイトを参考になさって下さい。
- 健康保険の扶養に関するサイト⇒『健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き|日本年金機構』
- 国民健康保険・国民年金加入についてのサイト⇒http://5kuho.com/html/taisyoku.html
育休手当をもらっている場合、税法上の扶養はどうなる?
次に、育休手当(育児休業給付金)が支給されている場合の、所得税や住民税の扶養についてです。
税法上の扶養と、社会保険上の扶養とは全く別物なので、上記の章とは切り離して考えて下さいね。
個人で納めている税金には、所得税と住民税の2つがあります。
*所得税とは、個人が1年間に得た金額に応じて支払う国税のことです。
*住民税(市県民税)は、その土地に住んでいる人や会社などにかけられる地方税のことをいいます。
これらの税金は、配偶者を扶養にすることによって安くなります。
税法上では、育休手当(育児休業給付金)を受給していたとしても、扶養になることができるんです。
「じゃあ、年収103万円の壁って何?育児休業給付金が103万円を超えたら?」と疑問に思いますよね。
国税庁のホームページでは、育児休業給付金の支給を受けている配偶者について、
「育児休業給付金は、課税されないことになっていますので、控除対象配偶者に該当するかどうかを判定する時の合計所得金額には含まれません。」と、あります。
育児休業給付金は、社会保険上では収入になりましたが、税法上では収入とはみなされないため、税金に関しては、育児休業給付金を支給されていても、配偶者の扶養になれるんです。
ただし、税金を計算するのは、1月から12月までの1年間なので、その間、育児休業給付金以外の給与収入が、103万円を超えた場合には、扶養にはなれません。
ですから、配偶者の扶養になれるかなれないかは、産休・育休、職場復帰のタイミングにも関係してきます。
また、給与収入が103万円超114万円未満の場合には、配偶者の給与が年末調整で計算される際、配偶者特別控除が受けられ、若干節税できます。
(配偶者特別控除は、次回の源泉徴収の記事で紹介する予定です。)
ちなみに、出産手当金や出産育児一時金も、非課税ですので、収入とはみなされません。
例えば、妻が、産休を1月から取って、引き続き育児休業を12月まで取得、出産手当金と育児休業給付金を受給したとします。
その間、会社から給与が全く支払われないとしたら、その年は、収入がないものとみなされ、夫の扶養になることができます。
翌年1月から仕事に復帰して、1年間の給与収入が103万円を超えた場合は、扶養から外れます。
この例の場合、出産した年の1年だけでも、妻を夫の扶養にすることによって、結構な節税になると思います。
また、住民税を算定する際にも反映されますので、住民税も安くなります。
ただし、翌年になって妻が職場復帰して夫の扶養から外れる場合には注意しなければならないことがあります。
妻を扶養にしていたことによって、給料から天引きされている所得税は安く設定されていますので、年の途中で妻の扶養が外れると、徴収されている所得税は年末には不足してしまいます。
翌年の年末調整で、逆に不足分を支払わなければならないという事態にならないように、会社には「(来年は)妻が職場復帰するので、扶養から抜いてください」と、伝えておきましょう。
配偶者特別控除、または育児休業給付金に関する税金についてはこちらを参考になさって下さい。
⇒ 育休手当と源泉徴収の関係とは?税金の仕組みを知って賢く節税
育休手当を支給されている場合、扶養手当はもらえる?
扶養手当とは、会社の給与の中に含まれる手当のうちの一つで、扶養家族がいる場合に支給されることが多いようです。
また、会社によっては、「家族手当」という項目にしているところもあるのではないでしょうか。
しかし、扶養手当や家族手当そのものがない会社もあります。
扶養手当があったとしても、社会保険上の扶養に合わせるのか、税法上の扶養に合わせるのか、会社の規定によります。
いずれにせよ、扶養手当は会社独自の手当で、会社によって違うんです。
ただ、もらえる条件が揃っていれば、育児休業の期間だけでも、もらった方がお得ですよね。
勤務先に確認をしてみるのがいいと思います。
まとめ
育休手当(育児休業給付金)を支給されている場合、3つの「扶養」のことが考えられます。
これらの「扶養」は、それぞれ独立したものであるため、別物としてみていきましょう。
例えば…社会保険上で扶養になれなくても、税法上では扶養になれることがあり得るということです。
1、社会保険上の扶養
育児休業期間中、健康保険と厚生年金保険は継続状態にあって、支払いは免除となるので、配偶者の扶養に入る必要がありません。
手続きが必要なので、会社を通じてしてもらいましょう。
育児休業期間中に退職した場合、給付金は収入に含まれますので、給付金を含めた収入が130万円(106万円)を超えると、配偶者の扶養になることができません。
2、税法上の扶養
育休手当(育児休業給付金)を受給していたとしても、給付金は収入には含まれませんので、給付金以外の収入が103万円以下であれば、配偶者の扶養になれます。
扶養になることによって、所得税や住民税が安くなります。
3、会社の扶養手当
会社独自の規定によるものなので、勤務先に確認して下さい。
社会保険や税金って、本当に分かりづらいですよね。
でも、知識がないと、損をしてしまうことも確かです。
理解することは、難しいかもしれませんが、実際に自分がもらっているお給料から差し引かれているものです。
この機会に、少しずつでも「わかる」ことを増やしていっていただければと思います。
尚、2018年から配偶者控除の年収要件が103万円から150万円に改正されることになりそうです。
できるだけ、今後の情報収集に、心掛けたいものですね。