ほとんどの会社では、源泉徴収が行われています。
今まで何気に会社でやってくれるものと思っていた源泉徴収ですが、「育休手当(育児休業給付金)をもらっている時ってどうなるの?」と、気になるパパやママも多いはず。
今回は、育休手当をもらっている場合の源泉徴収について、お伝えしていきます。
育休手当と源泉徴収の関係
源泉徴収とは、毎月の給与や賞与などから概算した所得税を前もって天引きしておき、まとめて納税する制度のことをいいます。
実は、この源泉徴収と育休手当(育児休業給付金)って絡みがあるんです。
しかも、育休手当をもらっている本人とその配偶者との両方に関係してきます。
(配偶者とは、夫が妻を、妻が夫をさしていう言葉のことです。)
どんな絡みかと言いますと、前回の記事でもお伝えしましたが、育休手当(育児休業給付金)は非課税であること、また、そのため収入の金額によっては配偶者の扶養になれることです。
⇒ 育休手当が非課税ってどういうこと?知っておきたい育休手当と税金の関係
⇒ 育休手当をもらっていても扶養になれる?知らないと損をする3つの扶養について
共働きの場合、源泉徴収や年末調整や扶養のことなんて気にもせず、勤め先にお任せという方が多いのではないでしょうか。
育児休業中は節税のチャンスともいえます。
この機会に、ぜひ、税金の仕組みについて一緒に考えて参りましょう。
ここでは、一般企業の会社員を対象にお話ししたいと思います。
育休手当をもらっている場合の源泉徴収は?
育休手当(育児休業給付金)、出産手当金、出産育児一時金は、非課税ですので税金は掛かりません。
ですので、これらの給付金に関しては源泉徴収をする必要がありません。
また、育児休業中は会社にも出勤せず、お給料も発生しないので、「源泉徴収、私には関係ないわ~」なんて思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、源泉徴収は1月~12月までの収入に対して行います。
その1年間の間に、育児休業給付金などの給付金以外に給料などの収入があって所得税が引かれていれば、年末調整をすることによって戻ってきますし、源泉徴収票も送付されてきます。
1年間まるっきり給与収入がない場合は、収入と税額を0として源泉徴収票を発行してくれる会社も稀にありますが、源泉徴収の必要がないと判断する会社がほとんどでしょう。
また、育休手当をもらっている途中で退職した場合、退職金の源泉徴収は、また別の計算方法で算定され、退職金のみの徴収票が発行されます。
ここで、いまいちわからない!という方のために、源泉徴収票と年末調整、控除額について説明していきますね。
源泉徴収票
1年間(1月~12月)の給与などの金額、社会保険料、その他の控除額、税額などをまとめた書類が、「源泉徴収票」です。
源泉徴収票は、会社から毎年、年末や年明けの給与明細書などと一緒に配布されることが多いと思いますが、数字が細かく書かれたA4の半分の用紙のことです。
年末近くなると、会社から2枚の申告書が配られて、扶養家族、生命保険などを計算して記入して提出しますよね。
その申告書に記入されたことをもとに、扶養家族の状況や控除額を含めた1年間の所得税を一人一人個別に計算して決定します。
その決定した数字をもとに源泉徴収票を作成するんです。
この源泉徴収票の右上に掛かれた「源泉徴収税額」が、その年に支払う所得税になります。
しかし、毎月天引きされていた1年間の所得税の合計額と源泉徴収票の所得税の額とでは、差額が生じてしまいます。
その過不足額が(会社によって異なりますが)給与などと一緒に支払われます。
それを「年末調整」といいます。
ほとんどの方は、戻り分が多いのではないかと思います。
控除額
よく耳にする控除という言葉ですが、金銭、数量などを差し引くという意味です。
ここでは税法上の控除のことで、ここでいう控除額とは、収入の一部について税金をかけない金額のことをいい、その控除額が多いほど税金の負担が少なくなります。
控除額には、社会保険料、配偶者控除額、配偶者特別控除額、また、個人で掛けている生命保険料や地震保険料、住宅借入金の金額から算出したものなどがあります。
少しややこしいのですが、何となくわかっていただければOKですよ。
とにかく、1月から12月までの1年間を通して、育児休業給付金などの給付金以外の収入がある場合には、税金の超過分をもらえる可能性があります。
会社から税金が戻ってこなかったり、生命保険料などの控除がされなかった場合は、確定申告をすることで税金が戻ってきます。
そのため、源泉徴収票の内容は必ず確認してくださいね。
確定申告についての詳しい記事はこちら
⇒ 育休手当と確定申告の関係について詳しく解説!節税できる3つのポイント
育休手当をもらって扶養になったら配偶者の源泉徴収は?
前章では、育休手当(育児休業給付金)をもらっている本人の源泉徴収について解説してきましたが、ここでは扶養する側の源泉徴収について説明していきます。
わかりづらいので、ここからは育休手当をもらっていて扶養に入るのが妻、その配偶者で妻を扶養にして控除を受ける納税者が夫として話を進めていきます。
育休手当(育児休業給付金)は非課税なので、支給されていたとしても給付金以外の収入の金額によっては、配偶者(妻からみた夫)の扶養になることができることをお話ししました。
では、その収入の金額とはいったいいくらなのでしょうか。
配偶者控除
育児休業給付金などの給付金以外の収入が、1月から12月までの1年間で103万円以下の場合に扶養になることができます。
厳密に言うと、所得が38万円以下の場合に扶養になれるんです。
何気なく使っている収入と所得ですが意味合いが違います。
給料やボーナスなどの収入から、必要経費を引いた金額のことを所得といいます。
サラリーマンの場合は、自営業のように明確に経費というものがはっきりしていません。
そのため、給与収入から、その収入額に応じて決められた必要経費を差し引いた金額をもとに所得税を計算します。
その差し引く必要経費のことを「給与所得控除」といいます。
給与金額から必要経費を差し引いた給与所得控除後の金額は下記の表から割り出します。
給与収入が103万円の場合、給与所得控除が65万円と決められているので所得は38万円となります。
また、株式や不動産はそのまま所得となりますので、38万円を超えた場合には扶養になることができません。
妻が育児休業給付金をもらっていて、年間のその他の所得が38万円以下の場合は、夫の扶養になることができます。
その場合、夫の納税額を計算する時に「配偶者控除」というものが適用となります。
妻が夫の扶養になることで、夫の収入から「配偶者控除」が引かれ、その引かれた金額をもとに所得税を算定するのでかなり節税になります。
パートをしている方の間で「103万の壁」とよく言われるのは、こういう事情があるからなのです。
ここで、「なぜ、扶養になるのに扶養控除ではなく配偶者控除?」と、疑問に思うかもしれません。
それは、同じ扶養家族でも配偶者(ここでは夫からみた妻)は配偶者控除、その他の扶養家族(子供や高齢の父母)は扶養控除と、税金を計算する都合上所得控除の項目が分けられています。
配偶者特別控除
実は、壁がもう一つあるんです。
それは、妻の収入が103万円を超えて141万円未満の場合には、夫の給与が年末調整で計算される際、「配偶者特別控除」が適用され、若干節税できるようになっています。
「○○控除」が多くてわかりにくいですよね。
「配偶者特別控除」とは、年間の給与収入が103万円を超えても、一定額までは所得控除が受けられるという制度です。
ただし、「配偶者特別控除」は、夫の所得が1000万円を超える場合は適用されません。
妻の所得に応じて、夫の控除額が下記の表のように、変動していきます。
ちなみに、気になる所得税(源泉徴収税額)の計算の仕方はというと、前章の表を使って、収入から給与所得控除後の金額を算出します。
その給与所得控除後の金額からすべての控除額を差し引いた金額(課税給与所得金額)に、税率をかけるなどして(下記の表を参照)算出しますが、かなり複雑です。
興味がある方は、ご自分の源泉徴収票をチェックしてみて下さいね。
配偶者控除、配偶者特別控除の手続きは?
1月から12月までに、育児休業給付金等の給付金以外の収入が103万円以下の場合は「配偶者控除」、103万円超141万円未満の場合は「配偶者特別控除」が適用されます。
明らかに妻の給与収入が年間で103万円以下であるならば、夫の会社に「配偶者控除の対象になる」ということを申し出ましょう。
そうすることで、会社では毎月の給与から天引きされる所得税を計算し直します。
申し出なかった場合や、妻の収入の金額の予想がつかなかった時は、年末調整の際に配られる2枚の申告書に、必要事項を記載して会社に提出すれば大丈夫です。
申告書に妻の収入の見積りを記載する欄がありますので、それまでの給料・賞与明細書を整理しておきましょう。
このとき、通勤手当などの非課税となるものは収入には含まれません。
配偶者控除の申告書
配偶者控除の対象になる場合は、夫の会社から年末調整の際に渡される「平成〇年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載することで、夫の会社に申し出ることになります。
「A控除対象配偶者」の欄に妻の氏名、「所得の見積額」に年収 − 給与所得控除(65万)を記載します。
また、この「平成〇年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載された情報で、翌年の給料から天引きされる所得税が決定します。
しかし翌年は途中で妻が職場復帰して夫の扶養から外れるようになることが考えられます。
妻を扶養にしていたことによって、給料から天引きされている所得税は安く設定されていますので、年の途中で妻の扶養が外れると、徴収されている所得税は年末には不足してしまいます。
よって、年末調整では超過分が戻ってくるのではなく、逆に不足分を支払わなければならないという事態になってしまいます。
トータルで考えれば、結局は所得税額は同じなのですが、取られるより戻ってきた方がいいですよね。
申告書を提出する際に「(来年は)妻が職場復帰するので、扶養から抜いてください」と、一言付け加えておきましょう。
その上で、給料明細書の所得税額が以前よりも多くなっていることを確認してくださいね。
会社によっては、その年の分と翌年の分の2枚が配られることがあります。
その場合、その年の申告書には控除対象配偶者として妻の氏名を書いて、翌年の分には書かない方が良いのかなと思います。
配偶者特別控除の申告書
配偶者特別控除の対象となる場合は、もう1枚の「平成〇年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」という書類に記載して会社に提出します。
右側の「給与所得者の配偶者特別控除申告書」の欄に、配偶者に妻の氏名、収入など必要事項を記載します。
書き方がいまいちわからないという方は、遠慮しないで会社の担当の方に聞いてみて下さいね。
源泉徴収の仕組みって難しいけど、育休は節税のチャンス!
税金関係のことって本当に複雑でわかりにくいので、なかなか理解しづらいですよね。
担当者があまり理解していない場合もよくあることです。
「育児休業給付金が支給されているから、配偶者控除は無理!」なんて言われることも・・・、どうしても会社でわかってもらえない場合は、確定申告をしましょう。
育児休業で収入が減ってしまうにもかかわらず、子供が生まれて何かと出費が増えていく時期です。
少しでも節税をして上手にやり繰りをしながら、なるべく手元にお金が残るようにしたいものですね。
平成30年からは、所得税の算定法が変わります。
今後の情報に注意なさって下さい。