現在67~69歳の、団塊の世代。この世代の子どもである団塊ジュニアが今、子育てに悩んでいます。子育てに失敗したと言われる団塊の世代はどんな時代に生き、どんな子育てをしたのか、そして団塊ジュニアはどんな子育てをしていけばいいのか、見てみたいと思います。
団塊の世代は、どんな時代を生きたの?
出生の背景
団塊の世代とは、第二次世界大戦直後の1947年~1949年に生まれた世代です。もともと、この時代は産婦人科での避妊・中絶・不妊手術が法律で禁止されていたため、若い男女の結婚の急増により出生人口も大幅に増えました。この三年間で、約806万人もの子どもが生まれています。
これを受け、1948年~1949年にかけて中絶を容認する法律が作られました。そのため1950年からは出生率が低下していきます。ちなみに団塊の世代は産婦人科医療を受けていましたが、その親たちは産婆さんによる出産を行っていました。
学力への価値観
戦争の苦しみを経験した親に育てられた、戦争を知らない世代です。学童期は1クラスに50~60人の子どもが溢れかえる状態だったようです。大学進学率は15~20%で、高卒や中卒で働き口を探す人が多くいました。
経済的に余裕がなく国公立大学を志望する家庭が大半で、女性は裕福な家庭であっても「学歴など必要ない」と言われるなど、進学の意思を押し潰されることが多かったようです。就職組は東京などの大都市へ出て様々な技術を磨き、日本経済を支えましたが、一方で地方の活性化が重要な課題となりました。
成果を勝ち取る時代
大学では学生運動、企業では労働組合による抗議運動が活発でした。より自由で快適な環境を求めて主張を重ねる左翼的な傾向を持っており、現代の規則や規定に従順で、不満を飲み込み、組織や企業の言いなりになる姿勢とは対照的です。
文化面では、欧米の文化と日本の文化をどちらも楽しむ動きが強まりました。ジーンズやミニスカートなどのファッション、ドライブやレジャーといった趣味が広がり、現代の若者にも繋がる基盤がつくられたのです。大量生産・大量消費の時代でもあり、クルマや家電、住宅などすべて、団塊の世代が求め、作り出してきたものと言えます。
繁栄と衰退
1970年代以降、結婚する男性や子供を産む女性が徐々に増えてきます。それまではお見合い結婚が多数派でしたが、この頃には恋愛結婚をする人が増えたようです。結婚・出産に伴い、親元から独立して核家族をなす家庭も多く、企業の団地が建てられたり交通網が整備されたりしました。
そして1986年から1990年、バブル景気が起こりました。経済成長が過熱し、もっとも潤った時代だと言えるでしょう。団塊の世代は一様に社会の中核を担っており、仕事に対する責任感から家庭を顧みなかったり、過労死で突然死したりした人も少なくありません。
1991年にはバブルがはじけ、年功序列や終身雇用の制度がなくなり、大規模なリストラが始まりました。日本は、ここから就職氷河期に入っていきます。バブル期までは自然に培われていた年長者への敬意が希薄になり、技術や伝統の継承も危ぶまれるようになりました。
そして現在、ほとんどの団塊の世代が退職を果たし、年金受給者となりました。今はその子どもたち、1971年~1984年に生まれた団塊ジュニアが子育てに奮闘する時代で、団塊の世代は祖父母の立場で育児に関わっています。
団塊の世代の子育ては失敗だった?
このような時代背景から、団塊の世代は、どのような子育てをしてきたのでしょう。
1985年、男女雇用機会均等法が制定されました。男女平等が叫ばれ、より自由な時代になっていったのです。当時は年功序列や終身雇用によって労働者の立場が守られていましたから、いい大学に入り、いい企業に就職し、家庭を持つことが一番だと考えられていました。
なかでも、大学に行きたくても行けなかった母親の期待は殊更に強かったものと考えられます。父親は子どもに働く背中を見せることが多く、基本的には妻に子育てを任せていました。バブル期まではその教育も上手く行っていたのかも知れません。
しかしバブル崩壊により、その生活は覆されました。親が職を失ったり、離婚したりした家庭も多いはずです。学力をつけて大学へ進学しても、いい企業へ就職できるのは、ほんの一握りになりました。派遣社員やフリーターになる人も増え、八方塞がりのように感じられたのではないでしょうか。
さて…団塊の世代は、子育てに失敗したのでしょうか。結果的には、そのように見えるかも知れません。しかしバブル崩壊で時代が大きく動き、その流れに飲み込まれてしまっただけにも思えます。団塊の世代も団塊ジュニアの方々も、挫折を味わいながら、必死に時代を繋いできたのでしょうね。
団塊ジュニアはどんな子育てをしていけばいい?
このことから分かるのは、人間には抗えない失敗や挫折が起きる可能性があるということです。団塊ジュニア世代が経験した就職氷河期もそうですし、近年の東日本大震災や熊本地震などもそうでしょう。生活の被害だけではなく、心理的な被害も大きかったに違いありません。
何か問題が起きたとき、それを大きいと感じるか小さいと感じるかは、人によって違います。ですから、どんな問題にも挫けるなというのは無理な話です。団塊ジュニアの子育てでも「時間が掛かっても問題に向き合い、再び立ち上がる力をつけること」が求められるのかも知れません。
挫折から再び立ち上がるためには、自分なら出来ると信じる必要があります。その気持ちはクリアしたゲームや、美味しい食事、友だちからの励ましの言葉など、様々なものから手に入れられます。しかし、親が自分を認めてくれることに敵うものはありません。
子どもが自信を失ったとき、親があたたかく見守り、ときに励まし、支えていけば、子どもは少しずつ自信を取り戻し、期待に応えようとしてくれるはずです。親も人間ですから常に優しくするのは難しいですが、失敗や挫折を繰り返しながら、子どもと共に成長していけたらいいですね。